幣事務所は、不動産に絡んだご相談を中心に承っています。
ここ最近、相続や節税、という視点を絡ませたご相談をお受けしましたが、
相談頂くみなさまに共通しているのは
「部屋を貸す」ということが、相談内容に絡んでいる点です。
そんな賃貸不動産を経営という面から見るとき、
指標がいくつかあることをご存知ですか?
もし、簿記などを学ばれた方であれば、
「流動比率」などがあったのをご記憶の方もいるかもしれませんが、
それと同じようなイメージのものが、賃貸不動産にもある、という話です。
私自身は、いわゆる経営指標みたいな、
理論っぽいことは、あまり好きではありません。
なので、ご相談を承る時も、カチっとした分析みたいなことは、行っておりません。
とは言え、
賃貸経営が安定する物件 を選んで取り組まなくては、意味がありません。
その点で、意識しているポイントが「2つ」あります。
それは、「金利差」と「K%」です。
「金利差」は、
「物件の実質利回り」と「融資金利」の差のことです。
例えば、賃料85,000円、管理費積立金12,000円の部屋が、
2,000万円の場合、実質利回りは、
(85,000-12,000)×12÷2,000万、で4.38%になります。
この部屋を、金利2%で融資を受けて購入した場合、
その金利差は、4.38%-2%=2.38%
となり、金利というコストを払っても、
利益が積みあがることになります。
この金利差の場合、積みあがる利益には、
「見える利益」と「見えない利益」に分かれます。
見える利益は、毎月のキャッシュフローと言われる、いわゆる手残り。
賃料から管理費積立金や元利の返済金を払った後、
手元に残る金額、というイメージです。
見えない利益は、元本が返済されて、資産として殖えている分です。
例えば、毎月の返済金額が60,000円だとして、
その内訳として、
元本が40,000円、利息が20,000円だとしたら、
この見えない利益は、月に40,000円、年間で480,000円というイメージです。
この金利差による、
見える利益と見えない利益を長期にわたって得ていくのが、
不動産投資、大家業の醍醐味のひとつだと私は考えています。
次に、K%ですが、これは、指標的な言葉を使えば、
「資金調達コスト」や「レバレッジ」が、
購入時において健全かどうかを示してくれます。
計算の仕方としては、 元利金の年間返済額÷融資金額 です。
例えば、金利2%で2,000万円を35年で融資を受ける場合。
毎月の返済金額は、66,252円になります。
年間にすると795,024円。
K%は、795,024円÷2,000万円=3.97%
これと物件の利回りを比較して、
「物件の利回り>K%」
であれば、健全というイメージです。
先程の金利差の所で例にあげた物件を考えると、
実質利回りは4.38%でしたので、
上記の内容で融資を受けることができるのであれば、
4.38%>3.97%
なので、健全である、という考え方です。
もしこの融資を3%で受けることになるとすると、
毎月の返済金額は76,970円、年間返済額は923,640円となり、
K%は、4.61%になり、実質利回りを上回ってしまうので、
投資対象としては不適格、というイメージです。
実際に、毎月のお金の流れであるキャッシュフローを考えても、
マイナスになってしまいます。
また、同じ2%で借りることができても、
期間が35年ではなく、25年だとすると、
毎月の返済金額は84,770円、年間返済額は1,017,240円となり、
K%は、5.08%となるので、これも不適格、というイメージです。
節税などを意識して、あえてマイナスでも良いという場合は、
違った考え方になります。
また、1部屋だけで見た時は、
「物件の利回り<K%」だとしても、
他に保有する部屋も含めて全体で「物件の利回り>K%」であれば、
良いという判断もありかな、とも思います。
いずれにしても、全体的に見て、賃貸経営という視点で見た場合、
お金の調達コストであるK%を上回る実質利回りを意識することは、
大切だと考えています。
このK%を考えると見えてくることは、
お金を借りる場合、経営の視点では「 低い金利で長く借りる 」が
有利だということです。
お金は、借りた後に、期間を短くすることはできますが、
期間を長くすることは原則できません。
金利も、交渉などで後から下げたりすることも可能性としてはありますが、
最初から低めに借りられるのであれば、それに越したことはありません。
皆さんが、融資を活用しながら賃貸用不動産を検討される場合、
「金利差」と「K%」という視点は、
意識してみるのが良いのではないか、と私は考えています。